抄録
近年トラブルが増加する歯科インプラント治療の裁判例を網羅的に抽出し,検索しえた 20 件の裁判例の傾向を統計的に解析した。
請求認容判決が 12 件あり,争点別の事件数をみると,術前検査は 4 件,説明義務は 12 件,
手術適応 / 手術時期は 4 件,手術手技は 12 件,術後管理は 8 件であった。そのうち,医療機関の責任が認められたのは,術前検査が 1 件,説明義務が 4 件,手術適応 / 手術時期が 3 件,手術手技が 7 件,術後管理が 2 件であった。説明義務と手術手技は紛争になりやすく, 手術適応 / 手術時期は責任が認められやすい傾向がみられた。
2015 年以降では治療指針等に言及したもの が 4 件みられ,このうち 2 件が責任を肯定していた。こうした近年の傾向からは,歯科に限らず総合診療においても医療行為を行う場合は, 治療指針等の記載を意識して治療を行い,その記載と異なる治療を行う際はその根拠を診療記録に残しておくことが望ましいと考えられる。