抄録
EBMは工ビデンス(実証)の妥当性と信頼性を評価したうえで臨床判断の基準とするアクションである。
この普遍的・総合的なアプローチにより,未知の臨床問題に出会ってもそれぞれの症例で最善の検査・治療法を客観的に選択して患者中心の医療の実践を目指す。
EBMという呼称は人口に膾炙するようになってきたが,その実践法は必ずしも正しく理解されていない。
そもそも医療はartとscienceからなり,そして臨床の中心はあくまで患者である。
この立場から従来の判断根拠の置き方を振り返ると,必ずしも患者の臨床的便益を考えてなかったり検査偏重主義になってしまったり,時には危険な治療さえ行ったりしていることに気づく。
すなわち病態生理学には限界がある。また,医師個人の知識・経験は限られているし,偏っている。
いみじくもヒボクラテスの言葉に「First, do no harm.」,「経験は欺く。故に判断は難しい。」とある。
EBMの根源はここにある。
さらに,工ビデンスを適確に評価できないと工ビデンスに使われてしまうことすらある。個々の患者への適用に関してはその患者の安全性と効用・合併症・予後なども十分に検討し,ヒューマン・ファクターを加算しなければならない。EBMは患者に始まり,患者に帰着する。