抄録
我が国では,動脈硬化性疾患が死因の 27 %を占めると報告されており,この割合は悪性腫瘍による割合とほば同等である。
多くの疫学研究,臨床研究,介入試験に基づいて,1988 年に米国でNational Cholesterol Education Program(NCEP)がコレステロール低下療法の系統的ガイドラインとして発表された。
その後,NCEPは最新の工ヒデンスも基づき,1993 年(NCEP-ATPIl),2001 年(NCEP-ATPIII),2004 年と改訂された。
我が国では, 1997 年に初めて「高脂血症診療ガイドライン」が作成され,その後の久山町研究やJapan Lipid Intervention Trial(J-LIT)に基づいて,2002 年に「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」が発表された。
その後,NIPPON DATA80 という疫学調査研究やMEGA試験,JELISに代表される介入試験の工ビデンスが加わり,2007 年にガイドラインの改訂が行われてきた。
今回の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012 年版」では,主な改訂点としては,
①診断基準境界域の設置,
②絶対リスク評価による患者の層別化,
③動脈硬化性疾患の包括的管理,
④高リスク病態の明示,
⑤non HDLコレステロール(non HDL-C)の導入があげられる。
今回の改訂では,リスクの高い症例に対して,より積極的な治療を行っていくことを原則として作成されている。特に,糖尿病,メタボリックシンドローム,慢性腎臓病(CKD),急性冠症候群,脳血管障害・末梢動脈疾患(PAD),そして喫煙を二次予防における高リスク因子として規定している。
今回のガイドラインには,これらのリスク因子を有する症例やリスク重積例についてはよりリスクが高いとして,より積極的な治療を検討すべきというメッセージが付されている。