抄録
腰痛は多発性骨髄腫(MM)患者の 58 〜 70 % にみられるが,高齢者でみられる一般的な症状でもある。
MMは腰痛から発見されることが多いが,診断を得るまでにしばしば時間を要し, 一般的な腰痛との鑑別が難しいことが窺える。
MMでみられる腰痛の特徴は,朝のこわばりを伴わず,安静時の持続性疼痛で,一般的な鎮痛薬では効果が薄く,局所に叩打痛や圧痛を伴う,頑固な痛みと要約される。
骨髄腫は赤色骨髄を侵すため,骨病変は頭蓋骨や脊椎など躯幹骨に多くみられる。
他の腰痛との鑑別には,
①数カ月以上の長期間,
②緩徐進行性,
③安静時の持続痛,
④頑固な痛み,
⑤NSAIDsの効果が不十分,
⑥痛みが広範囲,
⑦突然病的骨折を起こす,などの特徴が役立つ。
MM患者でしばしばみられる,高カルシウム血症,貧血,蛋白尿,血沈とCRPの乖離,総蛋白とアルプミンの乖離など,診断補助所見にも言及した。