日本病院総合診療医学会雑誌
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総説
当院一般内科の感染症治療の実態と研修医への感染症教育
山本 浩司山本 和貴林 三千雄
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2014 年 7 巻 2 号 p. 17-20

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抄録
当院では必ずしも専門的診療を要さない感染症患者の受け皿として一般内科が機能している。 総合診療科の研修医は担当医として入院患者を受け持ち,スタッフは研修医教育の中心を担っている。 一般内科としての入院の受け入れは 2010 年度から開始しており,初年度 229 人だった新入院患者数が 2013 年度には 355 人まで増加した。 感染症で入院した患者の内訳の上位 3 つは 2012 年度,2013 年度とも呼吸器感染症,尿路感染症,急性胃腸炎であった。 2012 年度に比し 2013 年度は吸器感染症で起炎菌同定率が上昇していた。 起炎菌同定率上昇に寄与したと考えられるのが,2011 年 7 月当院に赴任した感染制御部長である。 まず,救急センターで研修医が実施するグラム染色を開始し,それに引き続き開始されたグラム染色カンファレンスで研修医にフィードバックするとともに感染症に関する知識の共有を計った。 それにより,検体採取の重要性が研修医の中で再認識され,救急センターで喀痰採取の努力が一層なされるようになり,肺炎の起炎菌の同定につながったものと考えられる。 その他,発熱患者から血液培養を 2 セット採取することも徹底され 2010 年は 2 セット採取率が 30 %程度だったものが 2012 年には 90 %程度まで上昇している。 また,カルバベネムなど広域スペクトラム抗菌薬の使用状況も大幅に改善した。 以上,研修医の感染症診療の能力向上につながったと考えている。 ただし現状ではグラム染色の結果から起炎菌を推定し抗生物質を絞り込むところまで至ったのは年間数例に限られている。 今後,正診率の向上を目指し,さらなる抗生物質の適正使用にもつながるように取り組みたい。
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