日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
Print ISSN : 1881-2503
ISSN-L : 1881-2503
事例報告
岡山県内統一糖尿病地域連携クリティカルパスの意義と医療連携促進による機能分化についての検討
利根 淳仁肥田 和之大森 信彦中塔 辰明四方 賢一和田 淳
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 16 巻 3 号 p. 134-140

詳細
抄録

 岡山県で導入されている糖尿病地域連携クリティカルパス(以下糖尿病地域連携パス)の意義について検討した。対象者は国立病院機構岡山医療センターにて糖尿病地域連携パスを導入された324名(60±9歳、HbA1c9.4±2.2%)で、糖尿病地域連携パス導入後はかかりつけ医が治療の主体となり、国立病院機構岡山医療センターでは半年毎の受診の際に合併症評価や治療の再検討を行った。連携診療継続例は132名、経過良好、転居等の理由で終了した症例が124名、自己中断例が68名であった。経過中、6〜60ヶ月に至るまでHbA1c7.0〜7.2%で推移した。経過良好にて終了した81例のフォローアップ終了時のHbA1cは6.3±0.6%であった。

 糖尿病地域連携パス導入時と直近の治療内容の比較では、頻回注射法が26%から18%へと減少し、経口糖尿病薬、食事療法のみ、GLP-1受容体作動薬がそれぞれ増加した。さらに経過良好にて終了した81症例では、頻回注射法が16%から5%へと著明に減少し、経口糖尿病薬が67%から72%へ、食事療法のみが4%から8%へとそれぞれ増加し、連携診療を継続する間に血糖コントロールの改善が得られ、治療内容の軽減が可能になっていることが示唆された。一方、2007年と2013年の外来状況の比較(4〜6月、月曜日)では、平均患者数24.9人/回(連携診療0人)から19.0人/回(同5.4人/回)へと推移し、1回平均外来時間は6時間55分から5時間41分へと短縮された。さらに国立病院機構岡山医療センターにかかりつけの患者の疾病別の内訳では、1型糖尿病が35%、妊娠糖尿病が9%を占めた。

 糖尿病地域連携パスは連携の流れを確立するツールとして有用であり、地域医療連携を深化することにより病診の役割分担と機能分化を促進するものと考えられた。

著者関連情報
© 2015 特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
前の記事 次の記事
feedback
Top