2019 年 20 巻 1 号 p. 41-44
へき地で救急医療を実践するには様々な困難が存在する。医師・看護師等のモチベーションを維持する為には無駄を排し効率よく運営することが重要となる。今回奈良県南部約64%の広大な医療圏で唯一の2次救急病院として2016年4月1日に南奈良総合医療センターが開院した。院内に救急センターを設置し救急対応を担うこととなったが、開院前から様々な問題点が想定された。これらの問題点を解決すべく開院前に準備した効率化の工夫がどのような効果があり機能したかを後視的に検証した。我々が取り組んだ工夫は、まず救急医療に精通しているスタッフとそうでないスタッフをペアにした勤務体系を構成して勤務を通して救急医療を学べる体制、いわゆるon the job training(OJT)の体制としたことである。また安全で安価なinformation and communication technology(ICT)を利用しタブレットによる画像等を情報共有したコンサルト体制を構築し医師の時間外登院頻度を減じた。この体制によりスタッフはいつでも院外の専門診療科医にもコンサルトが可能となった。2016年4月1日から2017年12月末までに当院では22369件の救急患者の受け入れを行ったがそのうち救急車搬入6929件(31.0%)、ドクターヘリ272件(1.2%)であった。これは以前の南和地区での救急車受け入れ件数の約2倍であることが奈良県広域消防のデータから明らかになった。へき地での救急医療は効率化・安全性をマネジメントすることが重要で十分な救急体制の構築・維持ができる可能性が示唆された。