日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
新卒看護師への状況設定シミュレーション研修の試み
入職後9ヶ月の実践能力評価
中野 葉子角田 光代
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2020 年 20 巻 4 号 p. 183-188

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抄録

 看護師は、多様化する医療ニーズそして医療依存度の高い患者に臨床の場で患者の安全・安楽を担保した上で、患者の状態を正しくアセスメントし優先順位を考慮する必要がある。しかしながら、看護の現場において客観的に自己の言動を振り返る機会はほとんどない。そのため多重課題の対応から自己の行動を振り返り課題を明らかにすることを目標に新卒看護師を対象に入職後9ヶ月の看護実践能力を評価する「多重課題」状況を設定したシミュレーション教育プログラムを導入した。本研究では、入職後9ヶ月の状況設定シミュレーション研修による実践能力を明らかにすることを目的とした。2017年4月入職の64名の看護師を対象に準備された状況設定場面において受講者は10分間で多重課題に対応し、11項目からなるチェックリストを用いて自己・他者評価を行った。同時にビデオ撮影し、その動画をもとに受講者とインストラクターによるデブリフィングセッションを実施した。チェックリスト項目の評価では全ての対象者が優先順位を判断することができ、対象者は現場のOn-the-Job-Training(以下OJTとする)と日常的な看護場面での経験学習から優先順位を判断する能力を習得していた。対象者の90%以上が自身の課題における学びを実践に活用したいと回答しており、実践能力を評価し対象者へフィードバックすることができる状況設定シミュレーションは効果的な教育プログラムのひとつであると示唆された。

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