抄録
大学病院は、難病・重症の患者が多く、診療圏が広いという特徴を持っている。高度先進医療の開発と提供という社会的使命を持っている為患者は完治して退院するより、障害を抱えたまま退院せざるを得ない場合が多い。また、神経難病、膠原病、慢性心不全、慢性呼吸不全のように在宅医療の必要な患者も多い。救命救急医療の進歩により、脳血管障害の救命後、長期間のリハビリテーションの必要な患者が多く、在宅医療への移行が困難な事例が多い。東京大学附属病院では、中央診療部門に医療社会福祉部を設置して、専任の退院支援チームが、院内各診療科・部門および地域の関係諸機関・施設との連絡・調整し、患者が適切なケアを適切な場で受けられるように、退院支援・医療連携・在宅医療の推進を行ってきた。退院支援チームは、在宅医療コーディネーター (看護婦長)、医療ソーシャルワーカー (Medical Social Worker: MSW)、専任医師の3名からなっている。訪問看護ステーション、かかりつけ医、ケアマネジャー等とのコーディネーションを専門に行う専任の看護婦長 (在宅医療コーディネーター) を、当部に置くことにより、在宅医療に移行する症例が飛躍的に増加し、在宅医療への移行が推進された。以前であれば、入院治療を継続していた症例に対し、コーディネーションの経験を重ねた専任の看護婦長が、良く説明する事により退院に伴う不安を取り除き、在宅医療の推進した。