抄録
〈目的〉喉頭摘出術を受けたがん患者の長期療養支援のために、患者・家族との情報共有を目的として、療養経過シナリオを作成し有用性を検討する。
〈対象・方法〉がん生活障害の内容と経過について、文献および専門家のブレーンストーミングにより、症状の出現から退院後まで時間軸に沿って療養経過シナリオをまとめた。それに基づき入院中および外来通院中患者にインタビューを行いシナリオの妥当性と有用性を検討した。
〈結果・考察〉療養経過シナリオについて、術後または退院後の療養に関する相互確認、表記法の適切性、継続的な療養支援向上への貢献を検討した。その結果、1) 療養経過シナリオは、がん生活障害の内容をほぼ網羅できていた、2) がん生活障害は、失声の他、食事など生活習慣の変化に関するものが多かった、3) 退院後では、コミュニケーション障害の関心が高かった、4) シナリオを提示されることで経過がわかりやすいという意見が得られた、5) 療養支援においては術後の見通しを説明すべき時期 (クリティカルポイント) とそれに合った内容があることが見出された。以上より、療養経過シナリオは患者・家族との情報共有という観点で、術後経過の説明などに有用であると考える。