医療マネジメント学会雑誌
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医療の安全文化をいかに醸成するか
庄子 由美梅澤 昭子星 邦彦根本 建二大内 憲明
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2003 年 4 巻 3 号 p. 445-449

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抄録

医療安全管理体制を目的に、インシデントレポート報告体制、院内組織体制の整備はどこの医療機関でも行われている。しかし、それだけでは十分とはいえない。安全管理は一部の人間が一生懸命行っているだけでは機能しない。職種を問わず、病院職員1人1人が医療の質と安全の確保は職員の責務である事を自覚し、全員で取り組んでいくことが必要である。そのためには、医療の安全文化を如何に醸成させていくかが課題となる。厚生労働省は医療安全文化を「医療に従事するすべての職員が、患者の安全を最優先に考え、その実現を目指す態度や考え方およびそれを可能にする組織のあり方」としている。安全文化を醸成することは簡単なことではないが、我々が苦慮しながら行っている取り組みの中で、効果があったと思われるものは次の5点、すなわち、 (1) 医療安全に組織を挙げて真剣に取り組んでいくという宣言、 (2) 複数の職種で問題解決を図るプロジェクトチームの結成と活動、 (3) 医療安全に関する研修受講の徹底 (受講シールの発行) 、 (4) 改善につながつたと思える事例の具体的なフィードバック、 (5) Quality Control (QC) 的問題解決法の考え方である。安全文化の醸成とは達成する事を目指すのではなく、具体的なテーマを設定して、組織を挙げて取り組み、継続していく過程そのものであるといえる。

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