日本医療マネジメント学会雑誌
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蒸留水細菌汚染事故における危機管理
金子 廣保松浦 功文前川 和彦
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2007 年 7 巻 4 号 p. 525-529

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抄録
院内の蒸留装置システムの細菌汚染事故での対応を院内危機管理例として報告する。
当院薬剤部内蒸留装置のオーバーホール実施17日後の定期点検で、流出口よりの採取検体から細菌を検出した。事故判明2時間後に医療安全対策委員会を招集し、対策本部を設置して、全ての情報を集約した。対応方法としてこの期間の蒸留水使用患者リストを把握し、使用目的別ツリーを作成して患者情報を書き込んだ。経口洗腸剤、含噺剤希釈を除く水薬調製分に問題有りとして、外来患者30名、入院患者22名 (内10名は入院中) が対応の対象となった。服薬中のものには直ちに本人・家族に説明して謝罪し、当該薬を回収して代替薬を調達した。所轄保健所への報告も速やかに行った。翌日、汚染菌として環境由来非発酵性桿菌コマモナスが同定された。更に電話で個別に患者・家族へ事情を説明後、同日午後から委員会メンバーと小児科、産科主治医で患家を訪問し、再度説明して謝罪した。その際、健康状況の聴取と便培養を病院負担で行うことを提案した。計28軒の患家を訪問した。服用した患者44名は特別な症状を発生することなく本件は終息した。院内危機管理対応として、迅速な対策本部の立ち上げと情報の集約、効率的な対応策定および関係者を動員した組織的な対応が不可欠であることを認識した。
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