日本医療マネジメント学会雑誌
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医療安全活動における事故発見者としての患者の役割
渡邊 聖藤田 茂瀬戸 加奈子城川 美佳長谷川 友紀
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2008 年 8 巻 4 号 p. 526-533

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抄録

患者参加は、医療安全だけでなく、さまざまな医療の現場において、医療の質を担保するうえで重要である。しかし、患者参加に関する定量的な分析を行った研究は少ない。本研究の目的は、医療安全活動において、患者がインシデント・アクシデントの発見者としての役割を果たすことができるかどうかを明らかにすることである。
特定機能病院 (約1000床)、一般病院 (約180床)、ケアミックス病院 (約160床) の3病院においてアンケート調査を実施した。
外来患者の回収率は85.4%(1,506/1,764)、入院患者の回収率は47.9%(516/1,078) であった。外来患者の8.7%、入院患者の11.0%がインシデント・アクシデントや不安・不満事象を経験していた。入院患者のうち、インシデント・アクシデントを経験した者は、在院日数が1-7日の者で7.1%、8-14日の者で10.6%、15日以上の者で10.8%であり、在院日数が長くなるほど割合が高くなっていた。経験した出来事を患者が医療者に伝えたのは、外来患者の30.4%、入院患者の23.6%のみであった。患者が経験したインシデント・アクシデントのうち、医療者がインシデントレポートを提出していたのは14.3%であった。患者が発見できたインシデント・アクシデントは、「患者取り違い与薬」「点滴の滴下速度違い」「禁忌薬の処方」「副作用の発生」「点滴漏れ」などであった。
本研究では、患者の経験したインシデント・アクシデントや非安全事象のうち、医療者が発見もしくは報告できるのは、ごく一部に過ぎないということが示唆された。患者が発見した有害事象の情報を活かすことができれば、医療安全を向上させることができると考えられた。

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