日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
Print ISSN : 1881-2503
ISSN-L : 1881-2503
大腿骨近位部骨折術後自宅への退院と家族と同居との関連
近藤 暁子西林 和美門脇 りえこ穴井 邦子菅田 勝也
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 8 巻 4 号 p. 534-542

詳細
抄録

この研究の目的は、わが国の65歳以上の大腿骨近位部骨折患者について、家族と同居していることが入院治療後、自宅への退院と関連があるかどうか、さらに入院期間と関連があるかどうかについて検証することである。
2000年から2002年の間に2つの病院で大腿骨近位部骨折で入院して外科治療を受けた患者の診療記録から後ろ向きにデータを収集した (N=105)。2変量解析にて自宅への退院と入院期間に関連している変数を選択した。自宅への退院と有意であった変数についてロジスティック解析にて調整し、家族との同居が自宅への退院を予測しているかどうか検定した。
ロジスティック回帰分析の結果、家族との同居は、骨折前の居住地、認知症の有無、退院時歩行能力を調整後、独立して自宅への退院と関連していた。しかし、歩行能力の低下を調整した場合は家族との同居と自宅への退院は有意な関連は見られなかった。また、家族との同居と入院期間との関連は見られなかった。自宅に退院した患者は老人ホームに退院した患者に比べて入院期間が長く、退院時の歩行能力も高かった。全体として家族との同居は自宅への退院を予測していたが、入院期間はむしろ増加傾向にあった。娘と同居の場合は入院期間が短縮する傾向にあったが、娘と同居している患者は多くはなく、実際は難しいと考えられる。患者は家族と同居している場合は歩行能力が回復後、自宅に帰ることができると言える。

著者関連情報
© 日本医療マネジメント学会
前の記事 次の記事
feedback
Top