日本医療マネジメント学会雑誌
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骨粗鬆症地域連携クリティカルパスを組み合わせた大腿骨頚部骨折に対する地域医療ネットワークの構築
山口 徹本庄 宏浦部 忠久
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2009 年 9 巻 4 号 p. 535-540

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抄録

高齢化社会に伴って増加傾向にある大腿骨頚部骨折に対して、地域完結型治療をおこなうために、地域連携クリティカルパス (以下、地域連携パス) が普及しつつある。当院では2007年11月より導入し、2008年5月までに26名が利用している。導入によるメリットを明らかとすべく、2004年1月から2008年5月までの大腿骨頚部骨折患者603例を対象とし、平均在院日数と退院時転帰を調査した。平均在院日数は、地域連携パス導入前の511例では約38日、導入後の92例では32日と短縮していた。また導入前は在宅復帰率42.1%であったが、導入後は直接在宅復帰したのが33.7%であった。これに地域連携パスを含めたリハビリテーション目的の転院31.5%を加えると約65%が、導入後は在宅復帰可能であったと予測された。また、2007年に手術を施行した144例のうち、18例が再骨折例であったことから、大腿骨頚部骨折患者の今後の課題は骨粗鬆症治療の普及にあると示唆された。そこで、骨粗鬆症に対する薬物療法、運動療法、食事指導を急性期病院とかかりつけ医とで連携しておこなう地域連携パスを作成した。しかし、通院が困難である症例も多く、普及には至っていない。今後も、骨粗鬆症治療の必要性を地域に広め、地域医療ネットワークを構築し、大腿骨頚部骨折の発生数が減少に向かえば幸いである。

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