大学体育学
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原著論文
筋力トレーニングの介入を組み込んだ体育授業が大学生の筋力トレーニングの行動変容ステージに及ぼす影響
山本 直史萩 裕美子
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ジャーナル オープンアクセス

2013 年 10 巻 p. 41-52

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抄録

本研究では,大学生を対象に筋力トレーニングを中心とした身体活動介入を組み込んだ体育の授業を実施し,それが筋力トレーニングの行動変容ステージ,およびセルフ・エフィカシーに及ぼす影響を明らかとすること,また,授業終了概ね1年後に追跡調査を行いそれらの影響の残存性についても検討することを目的とした.

介入群は224名(うち,男性153名,女性71名),非介入群は172名(うち,男性137名,女性35名)であった.体育実技の内容は主にニュースポーツ,およびバドミントンを実施し,介入群に対しては授業時間の10~30分を用いて筋力トレーニングに関する介入を行った.主な介入内容は筋力トレーニングに関する知識提供,筋力トレーニングの実技指導,セルフモニタリングであった.評価指標として,筋力トレーニングの行動変容ステージ,およびセルフ・エフィカシーを測定した.

介入群は非介入群と比較して,授業受講前後における筋力トレーニングの行動変容ステージの良好な変化が認められた.具体的には,介入群は非介入群よりも男女ともに授業受講前後においてステージが下降した者,もしくは前熟考期のままであった者が有意に少なく,さらに男子についてはステージが上昇した者,もしくは継続期のままであった者が有意に多かった.筋力トレーニング行動に対するセルフ・エフィカシーについては有意な介入効果は認められなかった.介入群の一部の者(男子48名,女子23名)を対象に授業終了後概ね1年後の追跡調査を行った結果,介入終了後から追跡調査時点において,男子では45.7%の者に,女子では65.2%の者に筋力トレーニングの行動変容ステージの逆戻り,もしくは前熟考期の維持が観察された.

以上のことから,筋力トレーニングの介入を組み込んだ体育授業は,大学生の筋力トレーニングの行動変容ステージの良好な変化をもたらすことが明らかとなった.一方で,その効果の残存性については,さらなる長期間の追跡研究によって明らかにする必要性が考えられた.

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© 2013 全国大学体育連合
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