2015 年 12 巻 p. 25-31
本研究の目的は,身体と心の相互性に関する理解度を手がかりとして,健康教育を履修する大学生の健康観を検討することであった.健康教育を履修した学生165名を対象に,質問紙調査を実施したが(2013年7月),調査項目は①身体と心の相互性の理解に関する項目(16項目),②各自が構築した「健康」の定義に関する項目(3項目)であった.その結果,身体性の身体反応には身体的治療,心因性の身体反応には心理的治療が効果をもつというように,その判断はどちらか一方の領域に偏っており,身体と心の相互性に関しての理解は十分ではなかった.また身体と心の相互性に関する理解度は大学生の健康観には関連しておらず,授業で紹介されたWHOの「健康」の定義を出発点に健康概念を考察し,そして生活者の視点,人々の物語的な証拠(Narrative Based Medicine),あるいは日常的な経験に基づき「健康」の定義を構築したことが示唆された.