2017 年 14 巻 p. 35-47
本研究の目的は,体育実技としての「フィットネストレーニング」授業が及ぼす教育的効果について検討することであった.我々が実施したフィットネストレーニング授業では,履修学生が自身の体力水準や目的に基づいて自らのトレーニング計画を作成した.担当教員は,学生のトレーニングを助けるヒントを示したトレーニングダイアリーを作成し提示した.本クラスは運動経験の少ない受講生19名(男子4名,女子15名)によって構成されていた.毎回の授業の最初の段階では,担当教員からのフィードバックを参照しながら,当日の授業内に実施するトレーニング計画を立案する時間を設けた.担当教員からのフィードバックは,前回のトレーニングダイアリーの記述内容に対して教員が情報を提供する形で実施された.トレーニングの作成後,学生は自身が作成した60分間のトレーニングを実施した.本授業における学習効果とトレーニングの成果は,体力テストの結果(「脚筋力」,「全身持久力」,「腹筋持久力」,「バランス能力」,「運動不足度」,「総合評価」)と,授業内容に関するアンケート調査の結果を用いた.15回のフィットネストレーニングの授業を通して,体力テストでは,「脚筋力」,「全身持久力」,「総合評価」は有意に向上し,「運動不足度」,は有意に低下する結果が認められた.さらに,アンケート調査の結果から,大部分の受講学生が本授業を通して,運動を実施することを前向きにとらえるようになり,日常的な運動習慣も増加していたことが明らかになった.本研究の結果から,フィットネストレーニング授業では,学生がエクササイズのための基礎的な方法論を学習できるとともに,日常的な運動習慣を習得させるもしくは増加できる可能性が示唆された.したがって,我々が実施したフィットネストレーニング授業のプログラムは,大学体育を実施するための1つの事例として有効となる可能性がある.