大学体育学
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研究資料
2020年東京大会のレガシー形成に寄与する大学間連携のあり方に関する総合的研究:特に2012ロンドンPODIUMに焦点を当てて
舛本 直文小林 勝法後藤 光将師岡 文男
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2018 年 15 巻 p. 57-62

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抄録

本研究の目的は、2012年ロンドン大会時に展開されたPODIUMを分析することよって、その目的、活動内容、成果等を明らかにすることである。そのために、先ず第1にPODIUMの活動内容を分析し、第2にJOAの特別コロキウムでのPODIUMに関する情報交換内容を分析した。以上の分析において、主にPODIUM発行の資料、JOA特別コロキウムでの報告資料を対象にした。さらに、Haley事務局長へのインタビューによって本分析を補完することにした。PODIUMでは、組織的には、専従の人員確保とイギリス政府からの補助金による運営、事務所の設置やLOCOGとの連携が活動上には重要であったこと。特に、第2エンブレムとしてInspire Markの使用、e-mailアカウントにac.の利用による信頼性の担保による効果が大きかったことが指摘されている。PODIUMのプログラム的には雇用やボランティアの組織化とトレーニング、情報発信と共有化や、ベストプロジェクトの表彰などインセンティブにも配慮したプログラム展開が効果的であったこと。PODIUMの情報発信にはSNSやウェブサイトが重要なツールであったことなどである。教育・研究面では、新設コースの導入、学生の体験、研究プロジェクトへの参加、奨学金提供、競技や地域貢献活動によるイメージ構築、研究リソースの作成、公的機関やNPO、民間企業とのパートナーシップの構築などが有効な活動であった。日本への示唆として、早期の組織の立ち上げや戦略的な計画の必要、学内理解の推進やオリンピック・パラリンピックに関する教育・研究活動の評価などの重要性が指摘されていた。PODIUMの組織や活動に比べ、日本の大学連携では、事務局の人的・物理的組織化と予算化、事務局常駐者によるSNSを駆使した情報発信、イベント企画や学会などの会合調整、2020年大会組織員会や各種団体との連携など、いずれも未整備の状況にある。日本の大学連携事業には組織面とイベントや研究を含む事業面ともに、多くの課題があることが示唆された。

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