大学体育学
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事例報告
学習形態の異なる大学体育実技授業実施前後のライフスキルの特徴とその変化
中井 聖
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 15 巻 p. 46-56

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抄録

本研究の目的は,(a) 集団種目グループ学習,個人種目グループ学習,多種目一斉学習という3種類の大学体育実技授業の実施前後のライフスキルの獲得状況を調べること,(b) 授業実施後のライフスキルの変化について検討することであった.前述の学習形態の体育実技授業を受講している103名の大学生を対象に,授業の実施前後に日常生活でのスキル(すなわちライフスキル)およびスポーツ場面でのスキル(以下,スポーツ状況スキルと呼ぶ)について質問紙法による調査を行った.授業実施前後とも,全ての学習形態のスポーツ状況スキルの合計得点は同等であったのに対して,多種目一斉学習型の日常生活スキルの合計得点は他の学習形態よりも高かった.授業実施後の下位スキルのうち,多種目一斉学習型のスポーツ状況での創造的思考のみが向上したのに対して,いくつかのスポーツ状況での下位スキルは低下した.よって,授業実施によって生じたスポーツ状況スキルの変化は,学習形態間の日常生活スキルとスポーツ状況スキルの全体的な傾向に影響しなかった.加えて,スポーツ状況スキルの合計得点は,日常生活スキルの合計得点およびスポーツ経験の量と正の相関関係があったが,日常生活スキルの合計得点とスポーツ経験の量との間に相関関係はなかった.これらの結果は,より多いスポーツ経験がスポーツ状況スキルを高めるが,直接的にはライフスキルを向上しないであろうことを示唆している.したがって,ライフスキルを効果的に高めるためには,体育実技授業のスポーツ経験から引き起こされたスポーツ状況スキルの変化を般化させる授業担当者による働きかけが必要であると思われる.

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© 2018 全国大学体育連合
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