2012 年 9 巻 p. 117-125
学校における課外活動は人間的成長を促す場と考えられているものの,それを裏付けるデータはこれまで十分に蓄積されていない.本研究の目的は,大学期における課外活動の種類とライフスキル(life skills:以下LS)の関係を明らかにすることであった.近畿圏にある3大学(文系・理系・医学系)の男女学生2009名を対象に,島本・石井(2006)の日常生活スキル評価尺度(大学生版)による調査を行った.LSを「効果的に日常生活を過ごすために必要な学習された行動や内面的な心の働き」と定義するこの尺度は,対人スキル(親和性,リーダーシップ,感受性,対人マナー)と個人的スキル(計画性,情報要約力,自尊心,前向きな思考)に大別される8下位尺度から構成される.文化会系クラブ・サークル所属者(以下,文化会所属者)は研究系・芸術系・ボランティアから,そして体育会系クラブ・サークル所属者(以下,体育会所属者)は個人系・対人系・集団系・ダンスから構成された.分散分析の結果,以下のことが明らかとなった.
1)4年生は総合LS・対人LS・個人的LSのすべてで他の学年よりも有意に高い得点を,女性は対人LSでのみ男性よりも有意に高い得点を示した.
2)体育会所属者(とりわけ,集団系スポーツ)は,総合LS・対人LS・個人的LSのすべてにおいて,無所属者および文化会所属者よりも有意に高い得点を示した.
3)文化会所属者は,個人的LSの「計画性」で体育会所属者および無所属者よりも有意に低い得点を示す一方,対人LSの「対人マナー」で無所属者よりも有意に高い得点を体育会所属者とともに示した.
4)ボランティアサークル所属者は他の文化会所属者よりも,そしてダンスサークル所属者は他の体育会所属者よりも,全般に高いLS得点を示す傾向であった.
以上の結果は,大学期に所属する課外活動団体の種類とライフスキルの関係をある1時点の横断的調査から検討したものであり,課外活動とライフスキルの因果関係を明らかにしたわけではない.ライフスキルの2時点以上の縦断的な調査が必要であると同時に,その変化の背景となるスポーツ活動に内在する具体的な経験を押さえること,さらには高校までの活動経験も考慮したうえで,課外活動とライフスキルの因果関係を検討していくことが望まれる.