抄録
本研究では、Triple Pの枠組みを用いた心理面接を実施した。参加者は、自閉スペクトラム症ないしその疑いがあることを指摘された児童の保護者であった。介入の前後に質問紙調査を実施した。そして、mentalizing的な養育態度、子育てについての自信、保護者の精神健康度が改善するかを調べた。調査の結果、親が、わが子のスキル面と心理面の2つの側面から理解を深めることで、親子の相互作用が変容することが明らかになった。また、mentalizing的な養育態度の視点があると、スキル面だけを取り上げた場合よりも、わが子を多層的に理解できる可能性が示唆された。そして、3名の親の精神的健康度が向上、あるいは維持された。加えて、2名の親のmentalizing的な養育態度と子育てへの自信が向上した。心理面接の内容を分析した結果、親が自分自身の関わり方や心境の変化への言及数が増加していた。本研究において実践した支援を通して、親の過去の経験や性格・行動傾向をアセスメントして、柔軟性の高い心理面接機会を提供する必要があることが明らかになった。