抄録
高次脳機能障害者の就労阻害要因である遂行機能障害は,環境に左右されやすく,例えば訓練場面で出来ることが職場では出来ないなどの特徴がある。我々は環境を認知し適応する機能の障害が遂行機能障害に影響すると仮説を立てた。本研究は高次脳機能障害者への就労支援事例より,遂行機能障害の診断と専門家による計画的介入の実施を条件に87事例を選び,国際生活機能分類に基づき機能障害,活動制限,参加制約,環境因子を抽出し,それぞれについて遂行機能障害を持つ事例群と持たない事例群での事例数の割合から比率等質性を検定した。その結果,遂行機能障害を持つ事例群で,注意,洞察,判断の障害と社会的距離の維持の制限が有意に高い出現率を示した。同様にこれらの障害,制限を持つ事例群で有意に高い出現率を示す機能障害,活動制限,参加制約,環境因子を確認し,作業遂行プロセスモデルを用い,遂行機能障害との関係を図示した。