2013 年 16 巻 3 号 p. 147-157
マルチワイヤチェンバにおいて,アノードワイヤのピッチを狭くすれば,放射線計測における空間分解能は高くなるが,アノードワイヤの電位はピッチに反比例的に高くする必要があり,構造が窮屈となり,設計製作上の不利を伴う。そこで,アノードワイヤのピッチがp=3mmのポピュラなチェンバに,アノードワイヤ面に平行に電子スリットの働きを持たせる新たなスリットワイヤ面を設けることによって,アノードワイヤの電位はピッチがp=3mmに対応する元の低い電位のままで,ピッチを疑似的に1mmずつの3つの領域に区分計測できるようにした。α線を使って,オブジェクトを各領域に亘って順次計測し,後に重ね合わせた結果,実効的にp=1mmピッチのアノードワイヤ面を持つチェンバと等価な画像を得た。この技術は放射線を使って高感度で行う静止画像の撮影などに広く応用できる。