日本保健科学学会誌
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地域医療連携における画像情報の現状 : 東京都墨田区での調査
吉澤 寿
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2015 年 18 巻 1 号 p. 24-33

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抄録

医用画像情報(以下,医用画像と記す)の有用性が高まりつつある現在の医療において,施設間での医用画像の提供と共有は,地域医療連携において重要な案件である。近年の医用画像の電子化の普及はこれを容易にしてきている。地域医療連携における医用画像の共有に,互換性のない2つの記録方式が利用されている要因を解明することを目的として調査を行った。本調査は,東京都立墨東病院において,2008年1月から2011年2月の期間に院外から持ち込まれた医用画像について調査し,地域医療連携における医用画像の受領件数および医用画像の電子化の割合を明らかにした。調査の結果,医用画像の提供を受けた件数は,2008年が322件,2009年が1568件,2010年が2256件と経年的に増加した。その記録方式は,可搬型媒体(Portable Data for Imaging:以下PDI)とフィルムであった。PDIにより提供された割合は,2008年が17.7%,2009年が35.7%,2010年が49.6%と増加した。それを医療機関別に見ると,病院は2008年が23.8%,2009年が47.0%,2010年が60.7%であり,診療所は2008年が10.7%,2009年が24.9%,2010年が39.1%であった。大規模病院での電子化医用画像の普及率の高さを反映して,PDIにより提供された割合は,500床以上の病院で最も高かった。大規模な施設は医用画像を院外に提供する際にPDIを利用する割合が高い傾向が見られた。PDIを利用は,学会の定めたルールを順守していくことが重要である。一方,地域医療連携における医用画像の記録方式をPDIに統一するのは,短期間では難しいと考えられ,各医療機関における電子化の進展状況に応じて段階的に進める必要がある。

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2015 日本保健科学学会
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