抄録
固有受容性神経筋促通手技(PNF)における一部の上肢運動開始肢位は, 基本肢位に比べ下腿ヒラメ筋H波を促通し, 頚部単独の回旋位はH波の促通あるいは抑制に作用することが報告されている。上肢PNF肢位と頚部回旋位とを組み合わせた肢位を他動的に保持したときの脊髄運動ニューロンに及ぼす影響について検討した。健常男性9名の上肢および頚部を他動的に8通りの実験肢位に保持し, 基本肢位を対照肢位とし左ヒラメ筋H波を各々測定した。上肢PNF肢位と同側(左側)への頚部回旋位を組み合わせた場合, H波振幅は増大したが, PNF開始肢位単独と比較して相乗効果は認められなかった。上肢PNF肢位と対側(右側)への頚部回旋位を組み合わせると基本肢位と比べ有意差はなかった。これらの結果から, 非対称性緊張性頚反射の影響を生じる頚部回旋位保持に比べ, PNF運動開始肢位保持の脊髄運動ニューロンに与える影響が大きいことが示唆された。