日本保健科学学会誌
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低酸素環境の運動療法への応用に関する研究 : 常圧・低酸素室の試作
大倉 三洋吉田 良一山本 巌藤原 孝之
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2006 年 8 巻 4 号 p. 227-233

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抄録

身体に負荷をかける場合「運動負荷」に加え,低酸素環境も「環境負荷」としてトレーニング効果に影響を与えることが知られている。本研究の目的は,このような環境因子の中で低酸素環境を提供するシステムとしての常圧・低酸素室の試作と低酸素環境の運動療法への応用の可能性について検討するものである。今回試作の常圧・低酸素室には高分子膜を利用した窒素発生器を用い,臨床現場で簡単に設置可能な移動式タイプとした。また,低酸素室の酸素濃度も14.5%(高度3000m相当)まで任意に設定可能であり,運動療法用の低酸素室として十分機能するものであった。本装置を用いて,健常男性12名を対象に通常環境下と低酸素環境下における呼吸循環応答について比較検討した結果,低酸素環境下では通常環境下よりも軽い物理的負荷で通常環境下と同程度のストレスを呼吸循環系に与えることが可能であり,このことは高齢者や低肺患者,神経・筋疾患などで筋力が弱く通常環境下で十分な全身運動ができない患者の体力維持・改善を目的とする運動療法への応用の可能性を示唆するものであった。

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2006 日本保健科学学会
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