日本保健科学学会誌
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酸素濃度の相違が呼吸・循環機能に与える影響 : VE・SpO_2・HRの面からの検討
大倉 三洋吉田 良一山本 巌藤原 孝之中屋 久長辻田 純三古屋 美知
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2006 年 9 巻 1 号 p. 24-29

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抄録

身体に負荷をかける場合「運動負荷」に加え,空気中の酸素濃度も「環境負荷」としてトレーニングに影響を与えることが知られている。今回,高酸素・低酸素環境の運動療法への応用を目的に常圧下で酸素濃度を30%(高酸素環境),20.9%(通常環境),16.4%(中等度低酸素環境),14.5%(高度低酸素環境)に設定し,呼吸・循環機能に与える影響についてSpO_2, VE, HRの面から検討した。安静時,運動時SpO_2は酸素分圧の影響を受け酸素濃度の低下にともなって低下することが確認された。安静時,運動時VEとHRは酸素濃度の低下にともなって増加する傾向が認められた。これらの現象は,酸素分圧の低下により引き起こされる組織への酸素供給量の減少を補うための急性適応であると考えられる。この急性適応によって,高酸素環境では通常環境と同程度の生体負担度で,より強い物理的強度の運動が可能である。また低酸素環境では通常環境よりも弱い物理的強度で通常環境と同程度のストレスを呼吸・循環系に与えることが可能である。以上のことより,患者の全身持久力の維持・改善を目的とした連動療法を行わせる際には,連動負荷に加え酸素濃度という環境負荷を利用することによって,患者の状態に合ったきめ細かな運動負荷設定が可能であり,より効果的な運動療法の実施ができることを示唆するものである。

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2006 日本保健科学学会
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