日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第3回大会
セッションID: P2-18
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多次元クロマトグラフィーと二次元電気泳動法を用いた膵がんの血漿プロテオミクス
*柿坂 達彦近藤 格岡野 哲也藤井 清永西村 俊秀藤堂 省廣橋 説雄
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抄録

【背景】膵がんは早期発見が困難であるため手術不能例が多く予後不良な疾患である。早期に膵がんを診断できる鋭敏かつ特異的な腫瘍マーカーが求められている。本研究では膵がん患者の血漿を用い,プロテオーム解析の手法によって,膵がんにおいて発現ならびに翻訳後修飾の異常が認められる血漿タンパク質群を同定した。
【方法】国立がんセンター中央病院を受診した膵がん患者の血漿(n = 5)とボランティアの血漿(n = 5)を使用した。Multiple Affinity Removal Column(Agilent社)を用い,血漿から高容量タンパク質を取り除き低容量タンパク質画分(FT)を得た。 さらにFTを陰イオン交換カラムで5画分に分けた。全血漿,FTは個々人のサンプルで二次元電気泳動を行い,陰イオン交換カラムで分けたサンプルはそれぞれの分画で膵がん患者,ボランティアごとに混合し,二次元電気泳動を行った。二次元電気泳動の方法としては,2D-DIGE(two-dimensional difference gel electrophoresis)法を用いた。膵がん患者とボランティアで2倍以上発現量が変化しているスポットを,画像解析ソフトを用いて検索した。統計学的手法はStudent's t-testを使用し,p<0.01を有意とした。有意に発現量が変化しているスポットは質量分析にてタンパク質を同定した。
【結果】全血漿の二次元電気泳動では290スポットが観察されたが,高容量タンパク質を除いたFTでは403スポットに増加した。さらに陰イオン交換カラムを使用することで観察可能なタンパク質が合計1098スポットに増加した。この増加は分画によりタンパク質サンプルの複雑度を減少させたことによるものと考えられる。膵がん患者において有意に発現量が変化しているスポットが39スポット同定され,質量分析にてタンパク質を同定した。
【結論】多次元液体クロマトグラフィーと二次元電気泳動法を組み合わせた手法は血漿のプロテオーム解析において有効な方法である。同定されたタンパク質は膵がんの腫瘍マーカーとして有用なだけでなく,膵がんの病態の理解にもつながる可能性がある。

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© 2005 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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