日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第3回大会
セッションID: P2-19
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グリオーマの悪性化に関与するチロシンリン酸化蛋白質のプロテオミクスによる検索
*山岡 和子三島 一彦西川 亮松谷 雅生大海 忍福田 宏之秋田 朗子山本 行男佐内 豊
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抄録

多くの腫瘍関連遺伝子が産生する蛋白質は、リン酸化や糖鎖修飾等翻訳後修飾を受け細胞の癌化に関与している。脳腫瘍の約3分の1をしめるグリオーマは、脳という重要な臓器へ浸潤性に進展し,その機能障害をもたらすという点で臨床上極めて悪性度が高い。悪性グリオーマは外科的手術と放射線療法、化学療法を補助的療法とするがそれによる患者生存期間はこの数十年間ほとんど変わらない。新しい治療法の確立が急務であり、特にQOL(Quality of Life)向上のためにも社会的意義が大きい重要な課題である。グリオーマの悪性化に関与する物質をプロテオミクスの手法を用いて、蛋白質レベルで解明して、悪性グリオーマの発症に関わる分子異常を見つけだし、病態発現メカニズム解明と合理的な創薬・病態マーカーの特定を行い分子標的治療を実現するための基礎的研究行うことを目的とする。本年度は、ヒトグリオーマの組織標本(grade 2、grade 3、および、Glioblastoma multiform 等) を用いて、グリオーマの悪性化に伴い変化(増加)するチロシンリン酸化蛋白質について、デファレンシャルデイプレイを行い、発現プロファイルの比較を行った。悪性度の異なるそれぞれのヒトグリオーマの組織を破砕して、遠心分離後、膜画分を調製した。これらの膜画分中に存在する、チロシンリン酸化蛋白質群を、二次元電気泳動法と抗チロシンリン酸化抗体を用いたイムノブロット法を組み合わせて解析し、各グレード間で異なる発現プロファイルの比較を行った。その結果、腫瘍の悪性度により、明瞭に発現量の異なるいくつかのチロシンリン酸化蛋白質のスポットを確認した。質量分析等でこれらチロシンリン酸化蛋白質の同定を進めている。

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© 2005 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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