日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第3回大会
セッションID: S101-19
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構造プロテオミクスデータを利用した分子軌道法によるリガンド分子の結合様式の解析
*根本 直ディミトリ フェドロフ古明地 勇人金澤 健治上林 正巳北浦 和夫
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抄録

大規模な構造プロテオミクスプロジェクトの進展に伴い、多数のタンパク質の立体構造がNMR法やX線回折などにより非常に高速に集積されて来ている。これらの構造データの取得における最終段階には通常、分子動力学計算を用いた立体構造の「焼きなまし」が行われている。演者らは、それらの構造データのさらなる高度利用を目指し、フラグメント分子軌道(FMO)法の適用を検討してきている。本手法は、現時点ではNMR法によって構造が求められた比較的小さなタンパク質であれば重原子を含んだ全原子位置を、第一原理に基づく(非経験的な)分子軌道計算のみで高精度に構造最適化を行い、また大きなタンパク質であっても一点計算にて電子状態を解析することができる。したがって、溶液NMR法において情報の乏しい傾向が著しい短鎖ポリペプチドの解析の結果得られる多数の(不特定な)構造の一つ一つについて再度精密な構造を比較的高速に創出することが可能であり、その中には生物的意義を示す有効な構造が含まれる可能性が高い。また、リガンド_-_結合タンパク質のリガンド存在下における結合状態についてその電子状態を解析することにより、その分子の部分構造の結合への寄与の詳細を検討することが可能である。われわれは標的タンパク質として、結合ポケット内部に水分子が観測されないこと、結合ポケットにリガンド分子が結合した状態および結合していない状態の両方で構造が解かれていること、それほど大きくないタンパク質であることなどを基準に、カイコガ性フェロモン結合タンパク質を選定し、X線構造解析により構造の解かれたPDBファイル(1DQE)をもとにして各種解析を行ってきている。今回は、構造ファイル中のリガンドであるボンビコールを、自然状態でカイコガが利用しているアルデヒド体副成分ボンビカールに改変してFMO法にてリガンド各部位の部分構造ごとにタンパク質への結合の寄与度を見積り、ボンビコールと比較検討を例として応用例を示したい。

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© 2005 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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