主催: 日本ヒトプロテオーム機構
共催: 日本生化学会, 日本電気泳動学会, 日本蛋白質科学会, 日本分析化学会, 日本質量分析学会
種々の脳神経系腫瘍の病態発症予防・治療の基礎的情報を得るため、これらの病態組織細胞、及び原因遺伝子産物の細胞内機能を、細胞生物学的、及び最先端プロテオミクスの手法を用いて生化学的に解析している。今回、神経線維腫症(Neurofaibromatosis:NF)の原因遺伝子NF1, NF2 mRNAのSiRNAを構築し、細胞内NF1・NF2蛋白質のノックダウン法の確立を行い、これらの蛋白質の発現抑制による細胞内シグナル・細胞骨格の変化を生化学・形態学的に解析するとともに、これらの細胞内蛋白質のシグナルネットワーク解析を、我々独自に構築した病態プロテオミクス解析コアシステムによる最先端プロテオミクス解析法;2D-DIGE法、cICAT法, iTRAQ法を用いて詳細に行った。又、NF1高変異部位であるC末端部位、及びNF2高変異部位であるN末端部位に対する結合タンパク質群のプロファイリングをProteomic affinity cellular mapping法により網羅的に同定し、NF1,及びNF2蛋白質を介した細胞内シグナルネットワーク解析に供した。NF1蛋白質ノックダウン細胞においては、特異的Ras-PI3Kシグナルの活性化、それに伴う細胞骨格異常、細胞膜ruffling, 細胞運動能の亢進が観察された。又、NF2蛋白質ノックダウン細胞においても、細胞接着能、骨格系の異常が認められた。又、NF1及びNF2蛋白質への特異的結合蛋白質群として、Neuron Regulators、DNA修復酵素群、リン酸化・脱リン酸化酵素群、アポトーシス関連分子群、細胞骨格系・細胞接着系制御分子群、細胞周期関連分子群を含む、約100種類の蛋白質群が同定された。NF1蛋白質とNF2蛋白質に共通する結合蛋白質群も存在することから、これらを介したシグナルの異常がNF1及びNF2に類似する病態に関連する可能性が考えられた。