日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第3回大会
セッションID: P1-6
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血清蛋白質前処理方法の開発 part II - 特定蛋白質群の分画方法 -
*生田目 一寿淀谷 幸平中田 淑子稲持 朝小川 恭弘石井 芳則柴田 孝丸澤 宏小松 孝義木下 英樹横山 憲二斎藤 善正
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抄録

プロテオミクス解析のための生体試料前処理法として、血清試料からの特定蛋白質群の分画方法につき、糖蛋白質群、プロテアーゼ群、リポ蛋白質群の各分画法を検討した。
生体試料中の一度に多数の目的蛋白質を解析するためには、微量蛋白質を可能な限り検出するための種々の共雑物の除去及び微量蛋白質の濃縮を含む前処理法の開発が必要となる。そこで、検討試料として診断で汎用される血液(血清)を対象として、前処理法確立の方法論を考案した。
これまで、一枚の2次元電気泳動ゲル中で網羅的に蛋白質を解析しようという試みがなされてきたが、翻訳後修飾などの複雑さゆえに解析には限界がある。そこで、本研究では、網羅的ではなくユーザーの必要に応じた特定蛋白質群のみを解析するフォーカスドプロテオミクスという研究への流れを想定し、(1)糖鎖修飾のような特定の翻訳後修飾された蛋白質群、(2)プロテアーゼといった一定の機能を有する蛋白質群(3)リポタンパク質のような巨大不溶性タンパク質複合体といった蛋白質群を効果的に分画する方法の確立を目的として、前処理法検討をすすめた。
マウス血清を試料として、(1)では市販の12種類のレクチン固定樹脂、(2)ではプロテアーゼ阻害剤ベンザミジンあるいはアルギニンを固定化した樹脂、(3)では超遠心分画法、ヘパリン固定化樹脂、デキストラン硫酸あるいはポリビニルピロリドン沈殿法により分画してSDS-PAGE及び2次元電気泳動を用いて評価した。その結果、(1)では6種類のレクチン固定化樹脂で複数の微量蛋白質が吸着し、分画することが可能であることが明らかとなった。(2)は、アルブミンなどの非特異的な蛋白質が多く、評価が困難であった。(3)は、古典的方法として利用されている煩雑な超遠心法と比較し、簡便なデキストラン硫酸沈殿法が最も近い蛋白質泳動パターンが得られた。いずれの方法においても、我々が現在検討している高含有量不要蛋白質の除去方法と組み合わせて系統的に蛋白質を前処理分画することにより、効率良くフォーカスドプロテオミクス解析ができるものと考えられた。

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© 2005 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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