主催: 日本ヒトプロテオーム機構
共催: 日本生化学会, 日本電気泳動学会, 日本蛋白質科学会, 日本分析化学会, 日本質量分析学会
二次元電気泳動はタンパク質の分離に広く使われている手法であり、プロテオーム解析にも欠かせない手法として定着している。しかしながら現状の手法は、操作が煩雑でかつ長い作業時間を要し、再現性も低い。また、ハイスループット解析を目的とした自動化の適用が非常に困難である。そこで、我々は簡便に二次元電気泳動を行うことが可能なデバイスを開発した。基板材料としてpoly(methyl methacrylate)を使用し、射出成型と切削加工でデバイスを作製した。デバイスには一次元目泳動用の溝、二次元目泳動用のウェル、二つの二次元目用電気泳動バッファー槽が組み込まれた。また二次元目泳動用ウェルの上部は板で覆われ、内部にゲルを充填する微小空間構造を形成させた。これら構造体内部には、一次元目用ゲルとして固定化pH勾配ゲルを、二次元目用ゲルとしてポリアクリルアミドゲルをそれぞれ作製した。 実験は以下の手順により行なった。サンプル溶液を一次元目ゲルに注入し、一次元目ゲルの膨潤と等電点電気泳動を行った。次に、Cy5およびSDSを炭酸バッファーに溶解した染色液を一次元目ゲルに注入してタンパク質を蛍光標識した。その後、一次元目電気泳動と垂直の方向にSDS-PAGEを二次元目電気泳動として行った。最後にデバイスをCCDカメラで撮影することで蛍光標識されたタンパク質を検出した。実験中は、クーリングユニットを使用して温度制御を行い、コンピュータ制御の電源ユニットを使用して電気的制御を行った。 実験の結果、従来の二次元電気泳動法と比較し、必要とする試薬量の微量化や電気泳動操作を含めたサンプルの標識から検出まで全操作時間の短縮化が達成された。このデバイスを使用することで、低コストでハイスループットなタンパク質解析が可能となった。