日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第3回大会
セッションID: P1-10
会議情報

SYPRO Ruby染色によって検出されないタンパク質の存在
*木村 弥生石津 有理宇津木 康代横山 亮澤井 紀子北村 浩小原 收
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

SYPRO Ruby染色は、ゲル中のタンパク質を高感度に検出することができ、比較的定量性に優れているとされているゲル染色方法である。また、ゲル間の染色強度に高い一貫性があり、多数のゲル間でタンパク質の発現を比較するプロテオーム解析において、よく利用される染色方法の一つである。しかし、マウスのリンパ節から抽出したタンパク質を二次元電気泳動(2-DE)によって分離したところ、予想外に、クマシーブルー染色でははっきりと検出できるにもかかわらず、SYPRO Ruby染色では検出できないタンパク質スポットが複数存在することを見出した。質量分析計にて、これらのスポットを分析した結果、トロポミオシンファミリーに属するタンパク質であった。そこで、精製したニワトリのトロポミオシンを使用し、SYPRO Ruby染色前の固定の条件を検討したところ、エタノールよりもメタノールを用いた方が染色強度のより強い像が得られることが判った。また50%よりも10%で短時間固定するとより顕著な染色像が得られた。トロポミオシンは、coiled-coil構造で分子全体が構成されている珍しいタンパク質として広く知られている。そこで、SDSなどによって変性状態にあったトロポミオシンが、固定操作の過程でゲル内でcoiled-coil構造を再生し、結果として、SYPRO Rubyによる染色性が落ちるのではないかと考えた。蛍光エネルギートランスファー観察により、トロポミオシンのゲル内での構造再生をモニターしたところ、トロポミオシンは、染色強度が弱くなる固定条件の時ほど、ゲル内でcoiled-coil構造が回復していた。この結果は、SYPRO Rubyはcoiled-coil構造領域の染色効率が極めて低いという仮説を支持する。Coiled-coil領域を含むタンパク質は多数存在することから、SYPRO Ruby染色を用いた2-DEによる網羅的な定量解析を行う場合には、染色時間だけでなく、染色前固定操作についてもよくコントロールして行う必要があることが明らかとなった。

著者関連情報
© 2005 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
前の記事 次の記事
feedback
Top