日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第3回大会
セッションID: P1-11
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糸を支持体とする低濃度ゲルを用いた二次元電気泳動による高分子量タンパク質の迅速な分離
*佐伯 俊彦小竹 玉緒小島 祐明角田 欣一
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抄録

【序論】 二次元電気泳動法は、多種のタンパク質を一度に分離することのできる方法である。ミニゲルを用いたシステムは等電点電気泳動に要する時間も比較的短く、プレキャストゲルを使えば手軽に電気泳動が行える。しかし、分離したタンパク質を質量分析機を使って確実に同定するには、分解能や添加できるタンパク量の点で大きなゲルの方が有利である。アガロースゲル二次元電気泳動は、多量のタンパク質を泳動することができる上に高分子量のタンパク質も分離することができると言う大きな利点があるが、アガロースゲルの調製、等電点泳動とその後の処理にやや時間がかかり、再現性良く泳動するには熟練を要する方法である。
 我々は、高分子量タンパク質を分離でき取り扱いが容易な二次元電気泳動を、短時間で行いたいと考えた。そこで合成繊維を支持体とすることで、2.5% という低濃度のポリアクリルアミドゲルを取り扱うことを可能にし、このゲル(糸ゲル)を使った等電点泳動装置を開発した。
【実験方法】 直径 1.5 mm、長さ 140 mm の溝に化学繊維を並べ、2.5% アクリルアミド水溶液(2.7% C)を充填して糸ゲルを作成した。糸ゲルを水洗した後、5% pharmalyte (pH 3-10) を含む尿素溶液に1時間以上浸してから冷却装置付きの泳動板に設置し、ゲル温度を 15℃に保ちながら 0.2 mA を上限として 3000 V で 3.5 時間等電点電気泳動を行った。泳動試料にはヒト直腸ガン由来細胞株 WiDr 細胞から抽出したタンパク質を用いた。二次元目は 10% ポリアクリルアミドゲル (140 x 140 mm) による Laemmli の SDS-PAGE を行った。
【結果】  糸ゲル二次元電気泳動はアガロースゲル電気泳動と同様に、100 kDa を超える高分子量のタンパク質を分離することができた。糸ゲルは作成や取り扱いが容易で、等電点電気泳動に要する時間も短くて済むため、大きいゲルでありながら二次元電気泳動を1日で終えることができた。pH 勾配の広がりも良く、数多くのスポットを分離することができた。試料を濃縮することで CBB 染色で検出可能な量のタンパク質を泳動することもできたので、現在、タンデム質量分析によりタンパク質を同定しているところである。

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© 2005 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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