日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第4回大会
セッションID: S2-9-3
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分子イメージング
飛行時間型二次イオン質量分析法とインクジェット技術を組み合わせた分子質量イメージング
*橋本 浩行久家 克明村山 陽平小松 学岡部 哲夫山本 伸子
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抄録

1. 質量信号を用いたDNAマイクロアレイの定量的検出
キヤノンではインクジェット(IJ)技術を応用したローコストで再現性の高いDNAマイクロアレイの製造方法を開発した。この特徴は、(1)オリゴヌクレオチド(プローブDNA)を含む水溶液をインク溶液として使用し、(2)マルチヘッドのIJプリンターによりplオーダーに制御された液滴を吐出させ、(3)ガラス基板の表面にプローブDNAを共有結合により固定する、というものである。約50μm径のIJドット内に存在するプローブDNA分子約107個の直接検出法として飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を検討した結果、基板が絶縁物であっても測定条件を選べばその存在量を±10%の精度で定量的に検出できることを見出した。同アレイ上のプローブDNAの直接的かつ定量的検出についてはほとんど報告がなく、本法を併用することにより塩基のミスマッチなどに関する高精度な判定が可能になる。また、蛍光色素を使わないターゲットDNAの新たな検出方法として、ハロゲン標識ターゲットの利用とTOF-SIMSによる検出も検討した。その結果、ハイブリダイゼーション反応後のターゲットDNA量を臭素イオン強度として定量的に検出できることを見出した。
2. IJ技術とTOF-SIMSを組み合わせたタンパク質の可視化
キヤノンではタンパク質の二次元分布を可視化するための分子イメージング技術開発にも取り組んでいる。MALDIやその発展形であるSELDIはタンパク質のソフトイオン化法として優れた方法であるが、高空間分解能を得ることは難しい。一方、TOF-SIMSはサブミクロンオーダーの空間分解能を持つ半面、ソフトイオン化は原理的に難しいと考えられている。生体細胞内のタンパク質を例に挙げれば、ソフトイオン化を阻害する分子間結合の存在などもある。ここでは我々が取り組んでいる新しい可視化手法、すなわち、(1)消化酵素を用いた注目タンパク質の限定分解(IJ利用)、(2)断片化したペプチドの二次元分布測定(TOF-SIMS利用)、(3)データ処理による注目タンパク質の可視化(プロテオーム解析結果利用)を紹介する。また、モデル試料を対象に、insulin (Mw=5733)の親イオンを用いてその分布を可視化した結果も紹介する。

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© 2006 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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