日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第5回大会
セッションID: TP-3
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企業テクニカルポスター
フリーフロー電気泳動(FFE)のインターバルゾーンモードを用いた界面活性剤を含まないバッファを用いた膜タンパク質の分画
*和田 一輝M NissumR WildgruberG WeberC EckerskornK Hartmann
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抄録

フリーフロー電気泳動(Free Flow Electrophoresis;FFE)とは、ゲルやセルロース膜のような固体の支持体を用いず、電解質溶液だけで連続的にサンプルの分離・分画を行うものであり、非変性ならびに変性条件で、pHやサンプルのサイズに関わらず、分離を行うことができるという特長を有する。FFEは、等電点電気泳動(Isoelectric Focusing;IEF)、ゾーン電気泳動(Zone Electrophoresis;ZE)、等速電気泳動(Isotachophoresis;ITP)の3つのモードでの分離が可能であるが、主として用いられるIEFモードで膜タンパク質の分離を行うと、等電点沈殿を起こしやすいという問題があった。そこで、我々は、その問題を解決すべく、インターバルゾーン電気泳動(Interval Zone Electrophoresis;iZE)を開発したので、紹介する。iZEモードは、pHのグラジエントを形成することによってタンパク質をそれぞれの等電点にフォーカスするのではなく、一定のpHにおける荷電の程度により分離を行うため、目的のタンパク質のpIと異なるpHを選択することにより、等電点沈殿を起こさない、という特長を持つ。
(方法)HeLa細胞を用いて、全タンパク質抽出物と膜画分を調製した。すなわち、細胞を界面活性剤を含むリシスバッファに懸濁し、超音波破砕した後、超遠心にかけた上清を全タンパク質抽出物とし、細胞をHBSバッファと炭酸バッファで洗浄後、ペレットをリシスバッファ(7M尿素、2Mチオ尿素、4%CHAPS、1%ASB-14、1%DTT含有)に溶解したものを膜画分とした。これらのサンプルを、BDTM FFEシステムに、iZEモードを用い、分離用バッファのpHを8.0に設定して、アプライした。分離した各画分を回収し、トリプシン消化を行い、得られたペプチドを限外濾過と逆相のスピンカラムを用いて回収し、SDS-PAGEならびにLC-MS/MSでの分析を行った。
(結果)全タンパク質抽出物、膜画分ともに、iZEモードを用いることにより、分離用バッファに界面活性剤を加えていないにも関わらず、沈殿することなく、IEFモードに匹敵する高分離能で分画することに成功した。すなわち、LC-MS/MSによる分析により7回膜貫通型の膜タンパク質が検出されるほどの分離能を有し、分離用バッファへの界面活性剤を添加が必要ないため界面活性剤を除くステップが省けることなど、LC-MS/MSとの組み合わせで使用するのに非常に有用なモードであることが確認された。

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© 2007 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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