日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第5回大会
セッションID: S1-6-1
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プロテオミクスの新技術
デュアルベイト逆2ハイブリッドシステムとPCS-MSによるタンパク質間相互作用の機能解析
紀藤 圭治山口 佳洋太田 一寿*伊藤 隆司
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抄録

インタラクトーム解析の進展により、データベースには多数のタンパク質間相互作用が登録されている。しかし、その大半は機能アノテーションや定量的記述を欠いている。これらのデータを十分に活用するには、特定の相互作用を選択的に阻害したり、相互作用を定量的に計測する為の一般性の高い方法論が必要であると考えて、我々はその開発に取り組んできた。
前者に関しては、特定の相互作用を障害するが他の相互作用には影響しない機能分離型アレルを単離するために、デュアルベイト逆2ハイブリッドシステムを開発した(1)。このシステムは、同一細胞内で正逆2種類の2ハイブリッドアッセイを並列処理するもので、インタラクトームのハブのように多数の相互作用パートナーを持つタンパク質の機能解析や、選択性の高い相互作用阻害剤の検索に特に有効である。
後者に関しては、ペプチド連結型標準物質(Peptide-Concatenated Standard; PCS)と質量分析を利用してタンパク質複合体の構成因子の化学量論比を正確に計測する方法を開発した(2)。この方法では、定量に適したトリプシン断片(標準ペプチド)を各構成因子から選択し、それらを隣接配列とともに連結した人工タンパク質PCSを作成し、これを安定同位元素標識して精製複合体の質量分析による定量に用いる。PCSでは、全ての標準ペプチドが連結されているので、必ず等モルでサンプルに添加される。また、隣接配列の付加によって、標準ペプチドの切断効率がPCSと標的タンパク質とで同等になるために、正確な定量が実現する。更にPCSを上手に設計すれば、上記の機能分離型アレルも含めて異なるアレルの産物や、或いはオルタナティブ・スプライス・バリアントの産物を識別して定量することも可能であり、相互作用・複合体に関する理解を更に深めることも出来る。
本演題では、相互作用・複合体の機能解析に有効なこれらの技術を、いくつかの実例を交えながら紹介してみたい。

1. Yamaguchi Y et al. J Biol Chem 282:29–38, 2007.
2. Kito K et al. J Proteome Res 6:792–800, 2007.

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© 2007 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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