日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第5回大会
セッションID: S2-3-2
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疾患プロテオミクスの最前線
プロテアソームと疾患
*平野 久岩船 裕子キクチ ユリア岡山 明子川崎 博史荒川 憲昭
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抄録

プロテアソームは、ユビキチン化されたタンパク質を分解することによって重要な生体機能の制御に係わっている。したがって、プロテアソームやユビキチンならびにそれらと関連するタンパク質の異常はしばしば疾患の原因になることが知られている。演者らは、26Sプロテアソームを構成するサブユニットの翻訳後修飾はプロテアソームの機能に何らかの役割を担っており、その異常はプロテアソームの機能障害を引き起こし、疾患の原因となると推定している。しかし、プロテアソームにはどのような翻訳後修飾があるのかまだ完全に明らかにされていない。また、翻訳後修飾の役割もほとんど解明されていない。そこで、酵母を用いて26Sプロテアソームを精製し、質量分析装置などを利用して翻訳後修飾を網羅的に解析した。さらに、翻訳後修飾異常をもつプロテアソームを作製し、翻訳後修飾の役割を調べた。その結果、26SプロテアソームのすべてのサブユニットのN末端修飾の状態が明らかになった。31種類のサブユニットのうち、19種類のサブユニットがN-アセチル化されていた。また、1種類のサブユニットのN末端がミリストイル化されていることがわかった。一方、16種類のタンパク質はリン酸化されていると推定された。さらにO結合型アセチルグルコサミンで修飾されているサブユニットが少なくとも8種類存在することが示唆された。N-アセチルトランスフェラーゼ欠失変異体を用いた実験から、脱N-アセチル化によって20Sプロテアソームのプロテアーゼ活性が上昇すること、また、ホスファターゼ処理による脱リン酸化によって20Sプロテアソーム(キモトリプシン様活性)の基質に対する親和性が低下することがわかった。これらの結果から、プロテアソームの翻訳後修飾は機能と密接な係わりがあることが確認できた。そのため、翻訳後修飾の異常は、生体機能の異常を引き起こす原因になり得ると考えられた。

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© 2007 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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