日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第5回大会
セッションID: S2-3-3
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疾患プロテオミクスの最前線
ホルマリン固定肺癌組織切片を用いたプロテオーム解析による肺癌転移因子の探索
*西村 俊秀中野 智世西山 隆太郎海老沢 舞子吉田 浩一野村 将春矢倉 久仁子藤井 清永安東 純江板東 泰彦平野 隆加藤 治文
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抄録

臨床プロテオーム研究の探索的段階において、研究計画から適切な試料採取までに多大の時間が掛かり、研究スピードを遅くしているひとつの要因である。医学部病院など研究機関には,ホルマリン固定組織が臨床データ(経緯,薬物応答,毒性等)や患者背景とともに保管されている。このような保管試料を用いることができれば癌プロテオーム研究を加速できる。筆者らは、ホルマリン固定組織切片からのタンパク質解析を可能とする新規抽出技術を適用し、レトロスペクティブな探索的プロテオーム解析を実施している。このような探索的研究から見出されたマーカー候補群は、別のグループの試料により特異性を検証したのち、その有用性をさらに大きな規模の群で証明することにより新規治療法の開発に役立てたいと考えている。 本研究では、肺癌患者由来組織切片を用いて3群の比較解析を行った。内訳は次の通りである。転移(+)では、原発癌組織および転移先の癌組織(患者数6)において、また転移(-)では原発癌組織(患者数7)。なお、インフォームドコンセントの承諾を得られた試料を本研究に用いた。ホルマリン固定された組織試料から蛋白質をペプチドとして抽出する技術はLiquid Tissueと名付けられる。特殊コートされたスライド(Director™)上に乗せた組織からマイクロダイセクション (laser micro-dissection: LMD) (Leica社製LMD6000システム) を用いて癌細胞群を収集した。Liquid Tissue技術らなる抽出システム(ExCellerator)により可溶化し、プロテオーム解析に用いた。なお、本抽出法は膜蛋白質も効率よくペプチドとして抽出する利点がある。本発表は、「組織から血漿へ」というバイオマーカー開発の新しいプラットフォームに立っており、上記の新しい戦略に基づく肺癌転移因子に関する解析結果、およびマーカー候補分子の選択的定量を可能とするMRM(Multiple Reaction Monitorinng)技術の検討につき報告する。

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© 2007 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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