日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第5回大会
セッションID: S2-3-4
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疾患プロテオミクスの最前線
リン酸化プロテオーム解析による関節リウマチ病因関連分子の探索
松尾 光祐中村 洋増子 佳世遊道 和雄野寄 浩司西岡 久寿樹斎藤 知行*加藤 智啓
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抄録

【目的】代表的な炎症性多関節炎である関節リウマチ(RA)の病因病態に関与する分子を探索する目的で、RAの病変主座である滑膜組織の滑膜細胞で、非炎症性関節炎とされる変形性関節症(OA)と対比して、強くリン酸化されている蛋白質を網羅的に検出し、その病態的意義を検討した。 【方法】RAおよびOA患者由来の培養滑膜細胞から総蛋白を抽出し、それぞれを2次元電気泳動で分離した。その後、リン酸化蛋白質のみを染色し、RA滑膜で強くリン酸化されている蛋白質スポットを検出した。その一部を質量分析により同定した。また、同定した蛋白質のひとつについて、マウスに遺伝子導入し、関節炎誘起性について検討した。 【結果】RA、OA両疾患の滑膜細胞でリン酸化の程度に差のある蛋白質が複数個検出された。そのうちの10個弱を同定した。RAにて強くリン酸化されている蛋白質の一つとしてアネキシン7を同定した。アネキシン7は発現量もRA滑膜表層細胞にて多く、浸潤した炎症細胞にも認められた。また、本来、コラーゲン誘起性関節炎(CIA)に抵抗性であるB6マウスにアネキシン7遺伝子を導入したトランスジェニックマウスはCIA感受性となることが判明した。 【考察】RAとOAの滑膜細胞はリン酸化プロテオームに差異があることが示された。また、RAで強くリン酸化されているアネキシン7は、CIA抵抗性マウスを感受性に変えることから、関節炎発症に深くかかわると共に、治療の標的をなりうることが示唆された。

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© 2007 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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