日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第5回大会
セッションID: S2-4-2
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プロテオミクスの新技術・質量分析法を中心に
リン酸化から糖ペプチドまで:ETDによる翻訳後修飾解析
*窪田 雅之木全 順子坂本 茂
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抄録

ETD(Electron Transfer Dissociation)は翻訳後修飾など従来のCIDでは修飾部位が優先的に切断され、MS/MSスペクトル上に修飾位置に関する情報が得られないようなサンプルに対して、修飾部位を維持したままペプチド鎖を優先的に切断する新しい開裂機構です。LTQの3分割リニアイオントラップに対してイオン源の反対側からCIによって生じさせたアニオンを導入し、ペプチドのプロトン付加分子のプロトン付加部位に選択的にアニオンから電子移動を起こすことで開裂させます。FT-ICRMSで用いられるECDと類似する開裂様式をとり、C、Zタイプのイオンを生じます。プロトン付加部位に選択的であることからリン酸化などの翻訳後修飾部位は保存されたまま開裂し、修飾部位を決定することが可能となります。また、分子量が比較的大きく、価数の多い多価イオンほど効率的にスペクトルを取得することができることから、CIDでは困難であった分子量2000以上のMS/MSスペクトルも容易に取得することができます。ハードウェアとしては3分割リニアイオントラップを用いることで、MS/MS対象の試料イオン、反応を起こすアニオンそれぞれを独立してIsolationし、反応するイオン種を単一にすることで安定したMS/MSスペクトルを得ることができるようにデザインされています。本講演ではETDの基本動作と仕組み、CIDとETDの違いや特徴、そしてリン酸化と糖修飾の解析例をご紹介します。

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© 2007 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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