日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第5回大会
セッションID: S2-4-3
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プロテオミクスの新技術・質量分析法を中心に
ハイスループット電子捕獲解離
*馬場 崇佐竹 宏之万里 直己橋本 雄一郎長谷川 英樹平林 集
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抄録

電子捕獲解離(electron capture dissociation: ECD)は高いアミノ配列決定能力と翻訳後修飾分子の解析を可能とする手法として質量分析を用いたプロテオーム解析において有望視されている。我々は従来のECDの提供手段であるフーリエ変換型-イオンサイクロトロン質量分析装置(Fourier transform-ion cyclotron mass spectrometer : FT-ICR)にかわり、高周波イオントラップ内部でECDを実現することに成功しており[文献1]、最近、その反応速度と解離効率は従来法である衝突励起解離(collision induced dissociation: CID)と同等レベルに到達した。本方式により実現できた高速化・小型化ECDにより汎用的な高スループットプロテオーム手段を提供できるものと考えている。本報告では、高速かつ高分解能を有する飛行時間型質量分析装置に結合された高周波イオントラップを用いた電子捕獲解離について、最近の我々の研究の進展を紹介する。 現在一般的な質量分析によるタンパク質分析で用いられるCIDではペプチド分子イオンが大きくなると解離されにくい傾向がありアミノ酸配列の決定が困難となる。さらに翻訳後修飾分子を優先的に脱離する傾向があるためその修飾位置の決定も困難となる。1998年に実現されたECD[文献2]を用いれば、これらの課題を克服できる可能性が示されている。すなわち、ペプチドや10000Da程度のタンパク質であれば、消化することなくそのままアミノ酸配列を横断的に解離することができるので、デノボ解析が可能である。また翻訳後修飾分子を主鎖から失うことなくアミノ酸配列を解析する、すなわち修飾分子の修飾位置を確定することが可能である。 ※本研究は、株式会社日立ハイテクノロジーズの協力と、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実用化助成事業を受けて実施しました。 [1]T. Baba et al. Anal. Chem. 76 (2004) 4263 [2]R. A Zubarev et al. J. Am. Chem. Soc. 120 (1998) 3265

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© 2007 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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