日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第5回大会
セッションID: P1-10
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ポスター発表
6-ニトロトリプトファン特異的抗体を用いた機能プロテオミクス
*池田 啓一神野 宏司古川 覚峯木 礼子高 ひかり岩井 秀明内藤 久士高森 建二山倉 文幸
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抄録

 炎症部位などにおいては、NOとO2-に由来するパーオキシナイトライト(ONOO-)や二酸化窒素(NO2)などの活性窒素種が発生するが、それらが過剰に増えると、周辺の組織に対して酸化傷害を引き起こす。チロシンのニトロ化で生じる3-ニトロチロシンは、活性窒素種との反応で生成するので、活性窒素種のバイオマーカーとして注目されている。我々は、活性窒素種によりトリプトファンがニトロ化を受け、6-ニトロトリプトファン(6-NO2Trp)がタンパク質中に生ずることを見いだした [1]。  我々は、さらにin vivoでの検出を目指し、6-NO2Trpに対するポリクローナル抗体を開発した。この抗体は3-ニトロチロシンやニトロ化していないタンパク質群との反応性を示さない特異的な抗体であった。この抗体を用いてONOO-処理したPC12細胞の可溶性タンパク質画分をSDS-PAGE後、ウェスタンブロットを行ったところ、45kDa以上のタンパク質が抗体との強い反応性を示した。この反応性は、還元により消失した。さらに、2次元電気泳動後ウェスタンブロットを行い、免疫反応したタンパク質のスポットを切り出し、トリプシン消化後、LC-MS/MS分析を行った。その結果、M2 Pyruvate kinase, Pyruvate carboxylase, Elongation factor 2, Mitochondrial Aconitase, Heat shock protein 90αなどが候補として見つかった。  続いて、生体中での6-NO2Trp含有タンパク質の生成を確かめるために、その対象として、敗血症モデルラットを用いた。20mg/kgのLPSを腹腔内投与すると、腎臓においては、12時間後に誘導型NO合成酵素の顕著な発現誘導が見られた。そこで、12時間群において、腎臓の可溶性タンパク質画分を2次元電気泳動後、ウェスタンブロットを行い、特異的抗体で検出したところ、6-NO2Trp含量に差があるスポットがいくつか検出された。現在、更なる解析を進め、6-ニトロトリプトファン修飾の機能について検討している。 [1] F. Yamakura et al., 2005, J. Biochem., 138: 57-69

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© 2007 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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