日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第5回大会
セッションID: S1-2-2
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疾患・創薬マーカー探索の最前線
定量LCMSを用いた大規模臨床プロテオーム解析
*尾野 雅哉根岸 綾子廣橋 説雄山田 哲司
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抄録

我々が開発してきた2DICAL(2-Dimensional Image Converted Analysis of LCMS)法は、複数のスペクトラムからなるLCMSデータを、各スペクトラムの相関係数からLCの時間変動を補正して、質量電荷比(M/Z)、保持時間(RT)の2軸を持つ平面に描出する。この手法により同一ペプチド由来のピークが、強度(Intensity)を変数に持つM/Z、RT座標に変換され、複数サンプル間での無標識定量比較を可能にした(Ono et al., Mol Cell Proteomics 2006, 5:1338)。さらに、同一M/ZのピークをRT、サンプルの2軸の平面で描出するインターフェースを加えることで、多数検体間の定量比較が必要な臨床プロテオーム解析が可能となった。今回は膵癌患者血漿と子宮体癌患者血清からのバイオマーカー探索を具体例として、2DICALシステムによる臨床プロテオーム解析法を呈示する。
膵癌に関しては、膵癌43症例、対照者43症例の血漿を解析し、コンカナバリンAによる前処理を施した検体から115325ピークを検出し、両群間で有意差のあるピークをp値、ピーク強度、および強度比で10ピークに絞り込み、ペプチド、蛋白質同定を行い、翻訳後修飾の違いに基づくバイオマーカー候補を発見した。
子宮体癌に関しては、子宮体癌40症例、対照者30症例、子宮筋腫30症例、子宮肉腫25症例の血清を解析し、主要蛋白質除去カラムで前処理した検体から154,992ピークを検出し、子宮体癌患者、対照者群間で有意差を持つピークよりIQR(Interquartile range)>20で100ピークのシングルマーカー候補を選出し、それらのピークのペプチド、蛋白質同定を行い、同定蛋白質の発現差をウェスタンブロットにて確認した。
2DICALにて現在月間約200例の臨床検体が解析可能となっているが、このシステムは多くの質量分析装置のデータフォーマットに対応しているため、装置の数に比例してスループットの増加が見込まれ、今後より多くの臨床サンプルの解析が期待される。
また、本法によるフォルマリンパラフィン切片からの組織プロテオミクスついても解説する。

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© 2007 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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