日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: S3-4
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グライコミクスの医学への応用(糖鎖)
特発性正常圧水頭症の髄液中の糖鎖マーカー
二川 了次奈良 清光星 京香遠山 ゆり子亀高 愛城谷 圭朗本多 たかし今牧 理恵北爪 しのぶ湯浅 龍彦宮嶋 雅一新井 一古川 勝敏荒井 啓行伊藤 浩美久野 敦成松 久*橋本 康弘
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抄録

特発性正常圧水頭症(iNPH)は、加齢に伴う認知症であり、しばしば歩行障害や尿失禁を伴うことが多い。本疾患は脳脊髄液(髄液)の過剰によって引き起こされると考えられている。髄液は側脳室壁に存在する脈絡叢組織によって1日あたり400~500m作られている中枢神経系に特有の体液であり、種々の新規バイオマーカーを含むことが期待されている。我々はある糖タンパク質(GPX)がiNPHの患者において減少していることを見出した。GPXを完全精製してレクチンマイクロアレイで分析したところ、その糖鎖は極めてユニークなものであることが示された。なお、同じコアタンパク質を持つ糖タンパクが血清中に存在するが、この糖鎖とは全く異なるものであった。GPXが脈絡叢で生産されているかを検討するために、脈絡叢からコアタンパク質に対する抗体で免疫沈降を行った。免疫沈降されたタンパク質の糖鎖は髄液中のGPXの糖鎖とよく似ており、GPXが脈絡叢由来であることが示唆された。以上の経緯からGPXは脈絡叢から分泌されることが示され、iNPHを含めた髄液の代謝異常のマーカーになることが示された。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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