日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: S6-1
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プロテオミクスの医学への応用(その3) 疾患メカニズム解析
二次元電気泳動システムとその周辺ツールの新展開
*横山 憲二
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抄録

【緒言】現在のタンパク質を網羅的に解析するツールとして、二次元電気泳動法に基づく分析装置が広く用いられている。すなわち、はじめに等電点電気泳動(isoelectric focusing, IEF)によりタンパク質の荷電(等電点)をもとにした分離を行い、その後ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate, SDS)-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(polyacrylamide gel electrophoresis, PAGE)により、タンパク質の分子量をもとにした分離を行う方法である。しかし、二次元電気泳動では、試料中のタンパク質分子がIEFゲルに浸透するまでの時間、IEFにかかる時間、タンパク質を染色する時間、過剰な色素を除去する時間等をあわせると、10時間~2日間必要である。また、ゲルの洗浄、移動などそれぞれの操作の間に必ず手作業が入るなど、自動化が難しく、さらに二次元電気泳動に慣れた研究者でなければ、再現性のいい結果を得ることが難しい。そこで演者らの研究グループでは、搬送システムを用いることにより二次元電気泳動を全自動化したシステムの開発を行っている。  一方、タンパク質を検出する際に用いられる試薬の性能は、近年めざましい発展を遂げており、以前と比べてかなり高感度かつ使用勝手がよくなっている。しかし、染色時間が長く必要であるなど依然問題を抱えている。演者らのグループでは、タンパク質を検出するための新規な蛍光試薬、比色試薬の設計、合成を行っている。  本講演では、二次元電気泳動、タンパク質検出試薬等のタンパク質解析ツールの新しい展開について、演者らの成果を中心に紹介し、その将来展望について議論したい。 【結果】1)全自動二次元電気泳動システム1)  図1は演者らのグループが開発した全自動二次元電気泳動システムである。一次元目のIEFチップが順次搬送される方式となっている。まず、IEFチップホルダーが、乾燥IEFチップ(支持板にIEFゲルストリップが固定されたもの)をつかみ、タンパク質試料溶液槽へと移動する。次に、膨潤溶液槽に搬送後、IEF槽に移動し、所定の電圧をかけIEFを行う。さらにIEFチップを二次元目SDS-PAGEゲルスタート地点まで搬送し、ゲル同士を接触させSDS-PAGEを開始する。検出にCCDカメラを用いれば、SDS-PAGEを行いながら分離状況をリアルタイムに可視化することもできる。本チップ、システムを用いて二次元電気泳動を行ったところ、90分程度でサンプル導入から検出までを全自動で行うことができた。また、タンパク質スポットの分解能、検出数については市販のミニゲルと同等、再現性はそれ以上であった。 2)タンパク質検出蛍光試薬2-5)  演者らはこれまでにタンパク質検出蛍光試薬1、2の開発を行ってきた。これらは、単独では全く蛍光を発しないが、溶液中でタンパク質と混合すると、瞬時に赤色の蛍光を発する。また、多くのタンパク質に対して同等の応答を示し、還元剤等の妨害物質の影響もほとんど見られなかった。さらに、1、2をSDS-PAGEの染色に用いたところ、ゲル中のタンパク質は、本試薬によって染色され、高感度で検出できることが明らかになった。また、市販の試薬を用いて染色する場合、染色前のSDSの除去および染色後の洗浄が必要であるが、本試薬を用いた場合、これらの操作を行わずにタンパク質のスポットを検出することに成功した。さらに、電気泳動用緩衝液に試薬を溶解後、電気泳動を行いながら染色を行うことによって、従来よりも簡便かつ迅速にタンパク質の染色を行うことが出来た。  また演者らは、(株)関東化学と共同で試薬2をもとにした新規蛍光試薬を開発し、これを製品化した(製品名:Rapid FluoroStain KANTO)。この蛍光試薬は、試薬2と同様に簡便にゲル染色が行え、さらに試薬2以上の性能を示すことがわかった。 【参考文献】 1) A. Hiratsuka, K. Yokoyama et al., Anal. Chem., 79, 5730 (2007). 2) Y. Suzuki, K. Yokoyama, J. Am. Chem. Soc., 127, 17799 (2005)., 3) Y. Suzuki, I. Namatame, K. Yokoyama, Electrophoresis, 27, 3332 (2006). 4) Y. Suzuki, K. Yokoyama, PROTEOMICS, in press. 5) Y. Suzuki, K. Yokoyama, Angew. Chem. Int. Edit., 46, 4097 (2007).

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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