日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: S6-4
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プロテオミクスの医学への応用(その3) 疾患メカニズム解析
融合プロテオミクスによる悪性腫瘍の化学療法耐性メカニズムの解析
*荒木 令江
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抄録

近年の高感度質量分析器をはじめとしたプロテオミクスの技術革新により、今まで困難とされていた疾患関連の生体内微量蛋白質が、かなりの感度で定量的に、かつhigh throughputに得られるようになった。それに伴い、様々な病態に関わる重要な細胞内分子ネットワークや機能情報を含むプロテオームデータベースや、それを検索するソフトウエア、さらにそれらの同定分子群の病態への関与を検証する方法論等の構築・開発が重要課題として推進されている。我々は、脳腫瘍を含む神経系疾患に関連する病態プロテオミクスを展開するため、種々のプロテオーム解析技術およびDNA arrayを組み合わせて、得られた情報を統合し、様々な病態において異常に制御されたシグナル伝達経路を特異的に抽出する方法論を検討している。本シンポジウムでは、熊本大学病態プロテオミクスコアシステムにおいて行っている高感度定量的タンパク質同定技術、および生物学的機能解析とその検証手法(iTRAQ, 2D-DIGE, MRM, MANGO, Auto2D-Natural protein chip)を紹介するとともに、得られたデータを統合マイニングし、重要分子シグナル群を抽出する方法論、さらに抽出重要分子群の迅速検証法、siRNA等を用いた生物学的機能解析のスタンダード方法論を紹介する。疾患メカニズムを解明するためのプロテオミクス的アプローチの1例として、特に脳神経系腫瘍遺伝子関連分子群を介した細胞内シグナル解析と、gliomaの薬剤感受性に関わる分子群の解析例および検証方法論と結果を報告し、如何に融合技術によって大量に得られたプロテオームデータを迅速に処理し、重要機能分子群を抽出して検証する方法論が重要かつ有用であるかを議論する。これらの方法論はすべての疾患・病態の解析はもとより、細胞生物学における基礎的な分子メカニズム情報を得るためのアプローチにも応用できる。蓄積されたデータベースを活用することによって、新しい病態メカニズムの解明や診断や治療のマーカー・創薬開発にも応用できる基礎情報が得られる可能性がある。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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