日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: S8-3
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プロテオミクスの農学への応用
作物プロテオームデータベース:データベースの構築と機能解明研究への応用
*小松 節子
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抄録

農林水産業分野では、将来の地球的規模での食糧や環境問題の解決に大きく寄与するものとして、遺伝子組換えによる画期的な農業作物の開発が期待されている。この遺伝子組換え技術による新品種開発の鍵となる農業上重要な遺伝子の単離およびその機能解明・利用において、国際的に熾烈な研究競争が行われている。このような背景のもと、農業上重要な作物についてはゲノム塩基配列完全解読が行われている。本研究では、作物の重要形質の発現機構解明へ応用する目的で、プロテオームデータベースを構築した。 農業上重要なイネやダイズのさまざまな生育時期の各種器官あるいは精製細胞内小器官から抽出したタンパク質を二次元電気泳動し、二次元電気泳動画像に基づいてそれぞれのタンパク質を精製し、気相プロテインシーケンサーあるいは質量分析計でアミノ酸配列を決定した。そして、相同検索結果情報等をカタログ化してイネやダイズのプロテオームデータベースを構築し公開した。さらにイネやダイズの機能性タンパク質を検出するために、環境ストレス応答性タンパク質群の機能解明にプロテオームデータベースを利用した。その結果、イネの低温ストレスおよびダイズの冠水ストレス時において機能するタンパク質群を検出し機能を解析した。 ゲノム塩基配列解析研究が進んでいる作物に関しては質量分析計を利用して、プロテオーム研究が容易にでき、そして膨大なタンパク質情報を得ることができる。一方、ゲノム塩基配列情報が充実していない作物については、機能解明研究にプロテオーム解析技術がおおいに役立つ手法となる。その生物機能情報とともにデータベース化することにより、ゲノム機能の解明を加速させることが可能となる。さらにプロテオーム解析研究はタンパク質間相互作用研究と連動させることにより、生物機能解明に多いに役立つツールになる。本講演では、環境ストレスに関与する有用遺伝子の単離に役立ったプロテオーム研究例を紹介する。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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